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ChristineStogner

    Added on 21 January 2022
    駕籠で乗りつけて、降り立った玄関からまっすぐに式台を上がる。
     客間を開け放てば、縁側の向こうは梅雨に濡れそぼつ枯山水。
     
     初めての日と同じように。
     背から抱きくるめる沖田の腕のなかで、冬乃は眼前の小宇宙に魅せられた。
     
     只あの日と違うのは、雨がしとやかに降りつづいて、いつにもましてこの空間がふたりだけの世界として隔絶されているかの錯覚に、
     引き込こまれることで。
     
     
     静やかに均一に奏でられる心地よい雨音と、強く優しい温もりに包まれ、
     恍惚と冬乃は、沖田を背後に見上げた。
     
     このままずっとふたりきりで、このうき世の楽園に居られたなら。
     この隔絶された世界に、
     
     
     (それなら本当に貴方をひとりじめできるのに)
     
     
     訴える眼差しを感じたのか、沖田が冬乃の額へ口づけると冬乃を抱く腕の力を強めた。

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